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帝塚山中学校・高等学校とグローバルキャリア教育

09/20/2024

HGEFは、奈良県帝塚山中学校・高等学校のグローバル教育をコロナ前より支援しています。
帝塚山中学の中学生が毎年3月にハワイへ、そして今年5月にはハワイ州立中学校が帝塚山中学校を訪問して交流を深めました。読売新聞に記載された記事をご紹介します。

【特集】海外校との相互訪問プログラムで培うグローバルな「力」…帝塚山 (link)

 

以下記事本文:


帝塚山中学校・高等学校(奈良市)は、次世代リーダーの育成を目指し、中高6年間を通したグローバルキャリア教育を行っている。そのプログラムの一つに海外校との相互訪問があり、シンガポールの姉妹校を始め、米ハワイ、ブラジル、台湾などの学校と交流を図ってきた。今年3月に実施した中3生男子の「ハワイ・サイエンスキャンプ」と、5月に来校したハワイの中学生の受け入れを中心にこのプログラムを紹介する。

 

盛んな海外研修と海外校からの訪問受け入れ

海外研修と海外校からの訪問受け入れについて説明する別所教諭

 

「本校のグローバルキャリア教育は、グローバル社会で次世代のリーダーとなる人材の育成を目標としています。そのために語学力だけでなく、主体性を持って行動し、多様な価値観を持つ世界の人々としっかり対話と議論ができる力の育成を目指し、成長段階に応じた系統的なプログラムを用意しています」と、国際交流委員長の別所誠教諭は話す。

そうしたプログラムの一環として、同校は海外研修と海外校からの訪問受け入れを盛んに行っており、5月に訪問を受けたハワイの公立中学校ミリラニ校もこうした交流先の一つだ。「本校の生徒がハワイ研修の一環で訪問したことをきっかけとして2018年に交流がスタートし、相互交流へと発展しました。コロナ下でもオンラインで交流は継続し、今年、5年ぶりに訪問交流を再開しました」と英語科の中林豊教諭は説明する。

さまざまな学習・交流プログラムを体験した「ハワイ・サイエンスキャンプ」

まず、帝塚山側が3月21~30日の10日間、「ハワイ・サイエンスキャンプ」を実施した。参加した約40人の中3男子は、ハワイ島で火山学習を行い、オアフ島ではホームステイしながら、ウミガメを観察したほか、ハワイ大学マノア校の学生からプレゼンテーションの指導を受けたり、ミリラニ校を訪れて学校交流を行ったりした。ミリラニ校の生徒の前で英語でのプレゼンテーションを行い、昼食会に参加し、学校内を案内してもらうなど充実した時間を過ごした。

参加者の城田大輔君(現高1)は、「現地の人々と交流する場がたくさんあって、自分の語学力を試すのに良い機会でしたから、できるだけ英語で話そうと努力し、自分から行動することを心掛けました。今後はもっと英語を勉強していきたいと思いました」と話した。

 

有志生徒が企画・運営する交流プログラム

ミリラニ校の生徒を、自主企画による交流プログラムでもてなす生徒たち

代わってミリラニ校側からは5月14日、15人の生徒が来校し、帝塚山の生徒の家庭でホームステイしつつ、2日間の交流を楽しんだ。

初日は、放課後のウェルカムセレモニーのあと、帝塚山の生徒が企画した室内ゲームで交流。翌15日は、午前中に高1生が同行して学校案内ツアーを行い、授業見学や書道体験をした。学食でのランチを楽しみ、午後はミリラニ校の生徒が、高2生の前で日本語でのプレゼンテーションにチャレンジ。放課後は再び、生徒が考えたアクティビティーを楽しんだ。翌朝、次の滞在先へと向かうミリラニ校の生徒と別れを惜しんだ。

中林教諭は、「この交流プログラムの特色は、生徒の自主企画による交流の時間を設けていることです」と言う。「昨年夏に来校したブラジルの高校生との交流から、この取り組みを始めました。訪問を受ける前に、有志の交流委員を募り、交流企画の内容を考えることから、準備、当日の運営、進行までほぼすべて任せています。今回のミリラニ校との交流では高2生を対象に希望者を募り、立候補した約30人が交流委員として活躍しました」

石河 沙絵さん(高2)は、ブラジルの高校との交流に引き続き、今回も交流委員を務めた。「中3のとき、アメリカ・サンディエゴでの海外研修に参加し、世界のいろいろな価値観を持った人と交流したいという思いが強くなりました。交流委員に立候補したのも、海外の生徒と交流できる貴重な機会だと考えたからです。今回は2人の女子生徒のホームステイも受け入れ、自宅でも密度の濃い交流ができました」

ミリラニ校の生徒との交流に際して、石河さんは自身の経験を踏まえて接することを心掛けたという。「私がサンディエゴに行った時も、初めは緊張や不安を感じました。来校する海外の生徒も同じだと思い、安心して過ごしてもらえるように考えました。1日目は会話をしながら簡単に楽しめる室内ゲームで緊張をほぐし、2日目は屋外で体を使ったアクティブなゲームで盛り上がりました。交流を楽しんでいるのが伝わってきて良かったです」

石河さんは今もミリラニ校の生徒と連絡を取り合っているそうだ。「国や言葉が違っても話してみると親しくなれて、世界に友達が増えていくのがうれしいです。友達ができると、その国にも親近感を持つようになります。交流することで海外に対する敷居が低くなり、いずれは留学など一人で海外生活を体験してみたいと思っています」

 

相互交流によって広がる生徒の気付きと学び

 

「交流プログラムを任せることによって、責任を持って主体的に取り組もうという気持ちが芽生えます」と話す中林教諭

交流委員の多くは海外研修に参加した経験のある生徒だという。中林教諭は、「自身の経験があるからこそ、来校した海外の生徒が打ち解け、楽しめるにはどのようなアイデア、配慮が必要なのか、相手の立場になって考えることができます。迎える側を経験することで、自分たちが海外研修に行った時に相手の配慮があったから楽しめたのだと気付けます。これが相互交流の良さだと思っています」と語る。

ミリラニ校の男子生徒2人を受け入れ、ホストファミリーとしてもてなした城田君も、「ハワイを訪れたとき、ホストファミリーやミリラニ校の生徒が温かく迎えてくれたことを思い出し、自分から積極的に話しかけるなど気を配りました。ハワイでのプログラムとホームステイの受け入れを経験して、国が違っても共通の話題で盛り上がれるし、一方で文化の違いを感じる場面もあることが分かりました」と話す。

中林教諭は、生徒が企画する交流プログラムを今後も継続していく考えだ。「任せることによって、責任を持って主体的に取り組もうという気持ちが芽生え、より多くの学びが得られます。グローバルな意識やスキルの向上はもちろん、生徒たちが自分の強みを発揮し、成長する場となることを期待しています」

今年度後半から来年度にかけても複数の海外校から来校の予定があり、新たにサンディエゴの学校からも相互交流の申し出があるという。別所教諭は、「学校にいながら、アメリカ以外にも、ブラジル、台湾、シンガポールといった英語が第2言語と言える国など、同年代の多様な海外の生徒たちと交流できます。彼らと関わる中で、交流を楽しむにとどまらず、それぞれの国の課題に気付けるような広い視野を身に付けてほしいと考えています」と、期待を語った。

(文・写真:溝口葉子 一部写真提供:帝塚山中学校・高等学校)