今回の福岡への旅は私と家族にとって大変意義のあるものとなりました。
帰国して時間がいくぶんか経ったにも関わらず、未だに新しい発見が絶えません。家族とあの旅を思い返す時は、言葉は少なく、笑顔で頷き合って経験を分かち合います。
感覚的に共有できるのです。
八女市に訪れたときの経験がこれの顕著な例でしょう。私達の先祖の実家があった八女市の横山にて、父の銅像が建てられた公園に立ち寄りました。父はよく、如何にこの町にいた頃が幸せであったか、運命の悪戯によってここを離れてしまったと私に話しました。曽祖父母があの時、借金がなければ、カウアイ島のサトウキビ畑に渡らなければ、この銅像が建てられることもなかったのです。
その後、一族のお墓参りに行きました。墓場は静寂に包まれ、精神に深く響く意義深い時間を私達にもたらしました。
次いで父の生家を訪れた体験は、いっそう感慨深いものでした。生家へ続く道を歩きながら、曽祖父母たちがこの同じ曲がりくねった道をたどり、マクブライド・サトウキビ栽培園へと発った日に思いを馳せ、感動を覚えました。同じ道を歩くことで、父たちの長く辛い旅路の一端を知り、只々頭が下がる思いです。
そして、生家にて日本の親族と会えたことが、何よりも印象深い経験になりました。親族は私達をアロハで暖かく迎え入れてくださり、言語の壁を超えてその瞬間の尊さを分かち合いました。忘れ難い経験です。
語るべきことはいくらでもありますが、言葉にするにはあまりにも難しいことばかりです。言わずもがな、この旅は私と家族にとって、一生忘れられないものになりました。
敬具
ケン・イノウエ